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Toggle学校や教育機関で業務用エアコンを選ぶ方法
学校や教育機関における空調環境は、生徒の学習効果や健康維持において極めて重要な役割を担っています。適切な温度の管理は生徒の集中力を高め、学習効率の向上に寄与することが研究によって明らかにされています。
最近では、気候変動による異常な暑さや新型感染症への対策として、換気を重視した空調システムの重要性が増しています。業務用エアコンは家庭用モデルと比較して、広い範囲を効果的に温度調整できるだけでなく、耐久性や省エネルギー性能にも優れており、教育施設には非常に適した選択肢です。
文部科学省の調査によれば、2023年度には公立小中学校の一般教室における空調設備の設置率が「普通教室」で99.1%、「特別教室」で68.7%、「体育館等」で22.1%に達し、教育環境の整備が重要な要素として広く認識されています。
参考資料
公立学校施設における空調(冷房)設備の設置状況調査を実施
学校・教育機関の空調環境における課題とニーズ
教育施設における空調環境には、以下のような特有の課題があります。
教室、体育館、図書館など、各施設の特性に応じた空調設計が不可欠です。特に、大人数での使用時における換気と温度管理の両立が重要な課題となっています。
感染症対策の観点から、CO2濃度を1000ppm以下に保つことが推奨(厚生労働省基準)され、これには計画的な換気システムの導入が必須となっています。また、静かな学習環境の確保と省エネ性能の両立、そして生徒による誤操作防止対策なども重要な課題です。
参考資料
建築物環境衛生管理基準の検討について
業務用エアコンの種類と特徴
天井カセット形
推奨場所:教室、職員室など
360度の吹き出し口により、均一な空調を実現できる点が教室向きです。設置面積を取らないため、スペース効率も優れています。教室や職員室などの標準的な空間に最適です。
教室での空調分布を考えると、天井カセット形が最も理想的です。特に4方向吹出しタイプは、教室の四隅まで均一な空調が可能です。また、センサー機能を活用することで、人がいる場所を検知して風向きを自動調整できる機種も増えています。設置コストは若干高めですが、快適性を重視する教室には最適な選択といえます
天井吊形
推奨場所:体育館など
体育館などの大空間に最適で、強力な送風能力により広範囲をカバーできます。メンテナンス性も良好で、高い天井を持つ空間での使用に適しています。
体育館のような大空間では、温度の成層化が大きな課題となります。天井吊形は強力な気流により、この問題を効果的に解決できます。複数台を効果的に配置することで、運動時にも快適な環境を維持できます。特に、最新の機種では風向制御機能が充実しており、競技の妨げにならない気流設計が可能です
壁掛け形
推奨場所:小規模教室など
小規模教室や職員室に適しており、設置工事が比較的容易です。コストパフォーマンスに優れた選択肢として人気があります。
少人数教室や教職員室には、壁掛け形がコスト面でも使い勝手の面でも最適です。特に、既存建物へのリフォーム時には、工事の簡便さから選ばれることが多いです。ただし、室内機の設置位置には注意が必要で、黒板付近は避け、後方の壁面に設置することをお勧めします
床置形
推奨場所:大規模教室など
大規模教室や実験室など、特殊な用途に適しています。安定した温度制御が可能で、メンテナンス性にも優れています。
実験室や工作室など、特殊な用途の教室では床置形が重宝されます。特に重要なのは、床面からの空調供給により、実験台や作業台の下まで確実に空調が行き渡る点です。また、薬品を使用する部屋では天井面での配管を避けたいケースもあり、そういった場合にも床置形は有効な選択肢となります
業務用エアコンの選び方 - 8つのポイント
ポイント1:適切な能力(馬力)の選定
教室の場合、床面積1平方メートルあたり0.2~0.25馬力を目安とし、天井高や窓の大きさ、収容人数なども考慮して決定する必要があります。能力が不足すると冷暖房効果が得られず、過剰だとイニシャルコストやランニングコストが増大します。
教室の空調設計で最も多い失敗は、単純な面積計算だけで馬力を決めてしまうことです。南向きの教室は日射の影響が大きく、また、生徒数が多いクラスは人体からの発熱も考慮する必要があります。実際の設計では、これらの要素を総合的に判断し、約2割程度の余裕を持たせることをお勧めします
ポイント2:省エネ性能
最新のインバーター制御搭載機種は、従来型と比較して年間電力消費量を30%程度削減可能です。APF(通年エネルギー消費効率)値は、6.0以上の機種を選定することが推奨されます。また、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)への対応を見据えた選定も重要です。
初期費用が高くても、APF値の高い機種を選ぶことで、長期的には大きなコストメリットが得られます。特に教育施設では稼働時間が長いため、APF値が0.1上がるだけでも年間で数万円の節約になります。また、最近では各種補助金制度も充実しているため、高効率機器への投資は非常に合理的な選択といえます
ポイント3:静音性
学習環境として適切な運転音は45dB以下とされています。特に試験時期などは静かな環境が必要となるため、静音運転モードを備えた機種の選定が望ましいでしょう。
騒音は学習効率に直接影響を与えます。特に試験時には静寂が必要ですが、夏場は空調を止めるわけにもいきません。室外機の設置場所も含めた総合的な騒音対策が重要で、可能であれば、通常の授業時でも40dB以下を目指すべきです
ポイント4:空気清浄・換気機能
高性能フィルターの搭載や、換気機能との連携が重要です。特に感染症対策として、CO2センサーと連動した換気システムの導入が推奨されます。建築基準法に基づく必要換気量(一人あたり30m³/時)を確保できる設計が必要です。
教室の空気環境管理では、CO2濃度を1000ppm以下に保つことが重要です。しかし、単純な換気では冷暖房効率が著しく低下します。最新の空調システムでは、熱交換換気との組み合わせにより、空気環境と省エネの両立が可能になっています
ポイント5:温度ムラ対策
人感センサーや輻射温度センサーにより、室内の温度分布を均一に保つことが重要です。特に広い教室では、風向き制御機能により、直接風が当たることによる不快感を防ぐ配慮が必要です。
教室特有の課題として、窓際と廊下側の温度差が挙げられます。これは学習環境の公平性の観点からも重要な問題です。センサーによる自動制御に加え、サーキュレーターとの併用も効果的な解決策の一つです
ポイント6:操作性・安全性
誤操作防止のためのロック機能や、スケジュール運転機能、遠隔監視システムなどの導入により、効率的な運用が可能となります。特に、複数教室の一括管理ができるシステムは、管理負担の軽減に効果的です。
管理の手間を考えると、中央管理システムの導入は必須です。特に、始業前の空調開始や休み時間での一斉停止など、きめ細かな制御が可能なシステムを選ぶことで、快適性と省エネの両立が実現できます
ポイント7:メンテナンス性
フィルターの自動清掃機能や、メンテナンスのしやすさを考慮した設計が重要です。定期点検は年2回程度必要で、フィルター清掃は月1回程度が推奨されます。長期保証のある製品を選ぶことで、維持管理費用の予測が立てやすくなります。
教育施設では、長期休暇中にまとめてメンテナンスを行うケースが多いのですが、日常的なフィルター清掃も重要です。自動清掃機能付きの機種を選定することで、メンテナンス頻度を大幅に削減できます
ポイント8:導入コストとライフサイクルコスト
初期費用だけでなく、15年程度の長期的な視点でのコスト計算が重要です。電気代、メンテナンス費用、更新費用などを含めた総合的な検討が必要となります。
教育施設の空調設備は平均して15年使用されます。初期費用を抑えるために安価な機種を選ぶと、電気代やメンテナンス費用が嵩み、結果的にトータルコストが割高になるケースが多々あります。補助金制度も活用しながら、長期的な視点での投資判断が重要です
学校・教育機関におすすめの業務用エアコン
現在市場で主流となっている機種は、以下のような特徴を備えています。
- APF値6.0以上の高効率機種
- 運転音45dB以下の静音設計
- 高性能フィルターと換気機能の搭載
- 遠隔監視システム対応
- 自動清掃機能搭載
価格帯は、一般的な教室用(40~50平米)で、設置工事費を含めて100~150万円程度となっています。
まとめ
教育施設における空調設備の選定は、学びの環境の質に多大な影響を及ぼす極めて重要な要素です。施設の特性に合った能力の設計を施し、省エネ性能と静音性の両立を図ることが不可欠です。さらに、最近の状況を踏まえると、換気機能との統合による感染症対策も重要な要素となります。導入を考慮する際には、ライフサイクルコストを考慮した機種選定を実施し、効率的なメンテナンス計画を立てることで、長期的な視点に基づく選択が可能となります。
具体的な機種の選定にあたっては、複数の専門業者から見積もりを取り寄せ、詳細に比較検討することを推奨いたします。また、文部科学省や各地方自治体が提供する補助金制度の活用についても慎重に検討するべきです。空調設備の導入は、教育環境を整える上での重要な投資であり、施設の機能性を高めるために必須の取り組みです。
長期的な視点での検討と、専門家との綿密な打ち合わせを通じて、各教育施設に最適な空調設備を選定することで、より良い学習環境の実現が可能となります。田中電設では、多くの業務用エアコン設置実績がありますので、お気軽にご相談ください。